その12:頭すっきり—百会(ひゃくえ)
頭部に不快症状があると、なんとなく憂鬱になります。頭部が痛い、重だるい、頭の芯がボーッとした感じがする、といった不快症状はしばしば起きます。さらに耳鳴りといった症状があるとなおさら憂鬱になります。そのような症状をいっときも早く緩和し、すっきりとしたいものです。そんなときに効果的なツボが「百会」です。
「百会」は、頭のてっぺんにあるツボです。左右の耳孔を結んだ線と頭の正中を通る線との交点に取ります。「百会」の「百」は多種、多様などの意、「会」は交わるという意、「百会」は多くの経絡が交わるところにあるツボで、多様な効果が期待できる重要なツボです。頭部の痛み、重だるさ、頭の芯がボーッとするといった頭部の不定愁訴に効果的なツボです。また、耳鳴、めまい、鼻づまりなど頭顔部の症状にも効果的です。さらには精神的ストレスによる不眠や痔核にも用います。頭でお尻の病気を治療する、これは経絡を介した効果によるものです。
「百会」には「お灸」を試みて下さい。髪を左右に分け、お灸(米粒の半分くらいの大きさの艾を3ないし5壮〔一度にすえるお灸の回数〕)をします。心地よい快痛が頭の中を突き抜けると、とてもすっきりた感覚が湧き起こってくることでしょう。「百会」の「指圧」も心地よいもので、その場合は「百会」の周辺も含めて指圧しましょう。◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
爽やかツボ療法

その11:快食で元気—中脘(ちゅうかん)
食物を美味しく感じられることは、健康であることを表す指標のひとつです。体調の悪いときは、食物の味が分からなくなります。まさに味気ない食事になります。そうなると食欲が落ちてきます。食事は元気の元ですから、美味しく食事ができることは健康維持・増進には欠かせない大切なことです。それからもうひとつ大切なことは、腹一杯になるまで食事をしないことです。食養生として言い伝えられていることのひとつに、「腹八分目に薬いらず、腹六分に医者いらず」といって、満腹感を覚えるまで食事を摂ることを戒めています。実際、満腹感が起こるまで食事を摂ると、かえって病気の原因になります。いずれにしても美味しく食事ができるには、胃腸の働きをよい状態にしておかなければなりません。それには「中脘(ちゅうかん)」のツボが効果的です 「中脘(ちゅうかん)」は、上腹部の中央にあるツボです。みずおちと臍(へそ)を結んだ線の中央にあります。「中脘(ちゅうかん)」の「中」は当たる、中央という意、「脘(かん)」は胃袋という意、「中脘(ちゅうかん)」は胃袋の中央部に当たるツボで、胃を丈夫にするとともに胃の病変に起因する種々の症状(胃痛、嘔吐、膨満感、消化不良など)の緩和に効果があります。胃腸の弱い方はこのツボを「爪楊枝鍼」(爪楊枝20本程度をゴムバンドで束ねたもの)で軽くタッピングしましょう。皮膚がほんのり紅くなったらOKです。あるいは「温灸」でもよいのです。
なお東洋医学の「胃の腑」は現代医学の胃とほぼ同様なものとみなしますが、その働きは思慮(精神活動)と深く関係し、影響を受けます。思い悩むことが続くと食欲が落ちたり、胃がキュンと痛んだりしますが、そのような場合にも「中脘(ちゅうかん)」に爪楊枝鍼あるいは温灸をしてみてください。日頃から「中脘(ちゅうかん)」で元気な胃を、そして快食で日々を過ごしてください◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
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その10:健やかな眠りを—失眠(しつみん)
快食・快便・快眠は健康のバロメータだと言われています。しかし、いまひとつ食がすすまない、寝付きが悪いなどの愁訴に悩まされている方は比較的多いようです。ぐっすり眠れたらどんなにスッキリするだろうかと誰もが願っています。睡眠は脳と体を回復させるうえで大切な生理的現象です。それだけに熟眠、快眠はとても大切です。
自然な眠りをサポートするツボはいくつかありますが、ここでは「失眠」を紹介しましょう。
「失眠」は、踵の底の中央にあるツボで奇穴(きけつ)です。ツボは原則的には経絡に所属していますが、経絡に所属せずに独立しているツボもあります。こういったツボを「奇穴」といい、特定の症状の治療に用います。「失眠」の「失」は失うの意、「眠」は睡眠の意、つまり失眠は良好な睡眠が失われた状態を改善するという意味のツボです。
不眠の原因は様々で、うつ病などの精神的な疾患もあります。「失眠」はそういった不眠には効果は期待できません。例えば、ちょっとした悩みによる不眠などの「単純型不眠」に効果的です。「失眠」には、お灸がよいでしょう。踵の底ですから、そんなに熱くはありません。米粒の半分ぐらいの大きさの艾で5壮(一度にすえるお灸の回数)お灸をしてみましょう。どうしてもお灸に抵抗がある方は温灸を試みてください。
◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
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その9:お腹すっきり—便秘穴(べんぴけつ)
自然なお通じのある朝は、とても快適なものです。自然な排泄は、爽快感さえ引き起こしてくれます。しかし、便秘で悩む方はとても多いようです。特に注目すべきは、中高生などの若い女性に多いということです。清々しい気分で朝をむかえ、一日を軽快に過ごすには、まずは自然なお通じからです。
便秘で多いのは、「弛緩性(しかんせい)便秘」です。このタイプの便秘は、腸の運動性が弱いために起こります。太くて長い便の排泄は、弛緩性便秘の可能性が高いです。そういった場合、繊維素を多く含んだ食事と適度な運動が勧められます。繊維素で腸の中を刺激し、腹圧の変化で腸をマッサージします。できればこれらにツボ療法を加えてみてはいかがでしょうか。また、腸管の痙攣(けいれん)による便秘(痙攣性便秘)もあります。さらに便意をこらえることの習慣化や下剤の乱用により直腸の感度が悪くなって起こる便秘(直腸性便秘)もあります。痙攣性や直腸性の便秘は専門の先生に診ていただいた方がよいと思います。
便秘改善のツボが「便秘穴」で、へその真下指3本の位置から親指幅分左側にあります。このツボの刺激は排便行為の際に行ってください。両手の人差し指と中指を重ねて「便秘穴」に当て、小さな輪を書くようにしながらゆっくりと圧度をかけていきます。だいたい5秒ほどの時間をかけて押し込んでください。その後にみずおちから下腹部に向けて静かに腹圧をかけます。この動作を5回程度繰り返してください。やがて便意が強くなって排便に至ります。その日にうまくいかなくても次の日にと諦めずに続けてください。◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
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その8:はっきり見える―睛明(せいめい)
ITの時代です。コンピュータが生活のあらゆる場面に登場し、多くの人々がそれを利用しています。当然、画面を見ることが多くなります。かつてコンピュータ作業によって起こる「VDT症候群」が注目され、医療的にも社会的にも問題視されました。現在では、作業時間の改善や画面の改良などでVDT症候群の患者は少なくなりましたが、それでも「目の疲れ」を訴える人は非常に多いようです。目の疲れは目を使う作業だけではなく、精神的ストレスによっても生じます。東洋医学では目の疲れが続くと、感情や情緒にも影響を及ぼし、イライラ、怒りっぽい、抑うつ状態になると考えています。逆にイライラ、怒りっぽいなどのような精神状態が続くと、目に疲れがでてくると捉えます。何となく目に疲れを覚えたときは、「睛明」を指先で押さえてみましょう。
「睛明」は、目頭にあります。まさに目が疲れたときに自然に目頭を押さえますが、その部位が「睛明」です。「睛明」の「睛」は目の意、「明」は明るい意、すなわち「睛明」は、はっきりと見えるようにする効果があります。
「睛明」の刺激だけでは効果がみられない場合は「太陽」を加えてください。「太陽」は、目尻から指2本外側の部位に取ります。そうすることによって目の疲れは回復し、情緒的にも安定することが期待できます。
「睛明」や「太陽」には8秒程度の「指圧」を5回程度してください。仕事の合間にしてみましょう。
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その7:旅を楽しく(乗り物酔い)-内関(ないかん)

「乗り物酔い」が心配で行楽や旅行をついつい控えてしまう、そのような悩みは比較的多いようです。乗り物酔いの主症状は吐き気(悪心(おしん))と嘔吐です。この乗り物酔いの有名なツボが「内関」です。
「内関」は、前腕にあるツボです。手首のしわ(手のひら側で横に走る横紋)の中央から指幅3本上(肘に向かって)のところで、親指側の腱と次の腱との間にあります。
「内関」の「内」は内臓の意、「関」は出入りの要所という意、つまり「内関」は内臓機能と深く関係するツボで、特に消化器系の症状の軽減に有効です。吐き気や嘔吐はもとより、食欲不振、軟便、上腹部の張った感じなどにも用います。したがって、つわりや癌の化学療法剤の投与時の吐き気の軽減を目的に用いたりもします。日常的には精神的なストレスによる食欲不振などに用いて効果があります。また、このツボは胸苦しさや胸痛にも効果的で、狭心症の発作予防にもしばしば用いられます。
ツボ療法は「内関」穴に指圧をします。少し強めの指圧(1回の指圧は6〜8秒間程度)を断続的に7回程度行います。また乗り物に弱い人の場合は、車に乗る前の30分前に米粒のような小粒のものを内関穴に当て、絆創膏で固定しておきましょう。◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
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その6:肩を軽く肩井(けんせい)

「肩たたき」に象徴されるように、肩こりはもっとも身近な症状です。実際、肩こりを訴える人々は多く、様々な肩こりグッズが販売されています。
なぜ、日本人は肩こりになりやすいのか、不思議に思います。このことについての理由は明らかではありませんが、日本人は肩に対する意識が非常に高いことが影響しているのではないかという説があります。日頃「肩書」「肩をいからす」「肩を落とす」「肩をもつ」など肩をつけた慣用句をよく耳にします。こういったことが自然と肩意識を高め、いろいろなことを肩で受けとめる、そのようなことから肩こりになりやすいという考えです。
一方、肩こりを医学的にみると、肩の使いすぎ、頸椎(けいつい)の障害、内臓の障害、感覚器の障害など様々な原因で起こります。どのような原因かを明らかにしたうえで肩こりの治療をすることが望ましいと思います。ここでは、肩の使いすぎやストレスによる肩こりのツボ療法を紹介します。
肩こりの代表的なツボといえば「肩井」です。肩上部のほぼ中央にあります。「肩井」の「肩」は肩の意、「井」は陥凹の意、すなわち「肩井」は、肩でその下は井戸のように空洞になっているところに当たるツボです。実際、肩上の中央部の下は胸郭という大きな空洞があります。
「肩井」は、古来肩こりのツボとして親しまれてきた馴染みのツボです。肩こりは手作業でも起こりますが、精神的ストレスでも起こります。したがって肩こりをほぐすことは、心のこりをもほぐすことに通じます。「肩井」への「温灸」や指圧、あるいは「軽い肩たたき」をすると、気持ちがスーッとします。なお「肩井」への急激で強い刺激は、ときに脳貧血を引き起こすこともありますので、ソフトな刺激から始めましょう。
◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
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その⑤:大椎(だいつい)
「風邪は百病のはじめなり」と東洋医学では言います。いわば風邪(かぜ)は万病の元というわけです。それだけに風邪を予防したいものです。
東洋医学では、風邪を風(ふう)の邪(じゃ)と捉え、身体を犯す原因とみなします。身体のバリア機能が低下すると、「風の邪」は容易にバリアを通過して体内に侵入します。そうなると様々な症状を引き起こしますが、その代表が感冒、いわゆる風邪です。
一方、体表のバリア機能を司っているのが、体表をめぐる衛気(えき)です。衛気は、身体を衛(まも)る陽気のことで、様々な外邪から身体を防御する働きをしています。この衛気の巡りをよくするツボが「大椎」です。
「大椎」は、第7頸椎(けいつい)と第1胸椎の棘突起(きょくとっき)の間にあります。首を前に曲げると首と背中の付け根に飛び出る椎骨があります。それが第7頸椎の棘突起です。「大椎」の「大」は文字どおり大きいという意、「椎」は椎骨の意、つまり大椎は大きな椎骨のことで、第7頸椎を指します。大椎は、手足の陽経(ようけい)が交わることから体表の機能を高める効果があるとされています。したがって、風邪(かぜ)から体を守るには体表を流れる衛気が充実していることが大切で、それには「大椎」のお灸が効果的です。風邪を引きやすい方、あるいは風邪のひきがけで寒気がするような場合、「大椎」の温灸をお勧めします。3壮(一度にすえるお灸の回数)程度がよいでしょう。ドライヤーで温めてもよいのです。なお、発熱状態の場合には、医師に診てもらってください。 
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その4:リフレッシュ—湧泉(ゆうせん)
一日一生懸命仕事をした後は、なんとなく下半身の疲れを主とした疲労感を感じます。特に立ち仕事に就いている人にとっては、下半身の重だるい疲労感がつらいことさえあります。長い時間立っていると足がむくみ、腰に重だるい違和感が生じてきます。まさに「なんとなく疲れたなぁ」といった感覚です。そんなときに効果的なツボが湧泉です。
「湧泉」は、足の裏にあるツボです。足指を足底側に曲げると足の裏に人の字が現れ、その交点に凹みができます。その凹みが「湧泉」です。「湧泉」の「湧」は湧くという意、「泉」は泉で、このツボを刺激すると生命エネルギーがコンコンと湧くという意味で、重要なツボのひとつです。一時、青竹踏みや健康サンダルが流行りましたが、今は足の裏のマッサージです。とても気持ちのいいもので、女性に人気があります。
「湧泉」は疲労回復の他にリラクセーションにも効果があります。3分間程度、「湧泉」を中心に土踏まず周辺をゆっくり指圧すると下半身から全身の疲労がスーッと抜け、とても身体が軽くなります。その日の疲れはその日のうちにとる、「湧泉」の指圧はそんなリフレッシュ効果が期待できます。夫婦で、親子で、どうぞ家族みんなでリフレッシュを。
◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
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その3:三陰交(さんいんこう)
女性には、男性と異なり明確なライフサイクルがみられます。小児期・思春期・性成熟期・更年期・老年期といったライフサイクルがあり、それぞれのライフサイクルに応じた心身機能の特徴がみられます。小児期であれば、性成熟期に向かう時期だけに心身の不安定による症状が起こりやすく、性成熟期では妊娠・出産といった重大な出来事を迎えます。更年期から老年期にかけては、老化に起因した身体的な変化はもちろんのこと、精神的にも多くの問題を抱える時期に当たります。このように変化に富んだ女性の生涯を支えるツボが「三陰交」です。
「三陰交」は、脛骨(けいこつ)(すね)の内側にあるツボです。内果(ないか)(うちくるぶし)の最も高いところから指幅4本上で脛(すね)のすぐ際(きわ)に取ります。「三陰交」の「三陰」は足の厥陰(けついん)肝経、足の少陰腎経、足の太陰脾経の3つの経絡の意、「交」は交わるの意、すなわち「三陰交」は1穴で3つの経絡の効果が期待できる重要なツボということです。
「三陰交」は「婦人の三里」ともいわれ、女性の健康維持・増進にはかかせない大切なツボです。それは女性固有の子宮の成長と発育および機能を司るからです。したがって、小児期から老年期の様々な状態に対応することが可能なのです。「生理痛、冷え症」はもとより「更年期障害」にも用います。爽快な日々を「三陰交」から。一度試してみませんか。
◇毎日ライフ2004年4月増刊号◇より
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