この度、『鍼灸マッサージ師のためのスポーツ東洋療法』が刊行されましたことは、誠に時機を得たものであり、大きな意義を持つものと考えております。

本書の旧版である、『スポーツ東洋療法ハンドブック』が出版されたのが2001年でありますので、実に17年ぶりの全面改定となります。旧版が出版された当時、あん摩指圧マッサージ師、はり師きゅう師（あはき師）の業が急速に変化を遂げ、スポーツ分野や福祉分野などに職域が広がりを持つようになったことを背景に、あはき師に新たな知識を普及させる必要があったことが、発刊の契機になったわけですが、その後、スポーツ分野におけるあはき師の役割が、スポーツ選手はもとより一般のスポーツ愛好者に対する施術、治療に及び現在に至っていることは、周知の事実であります。また、学術研究の分野でもあはきの効用や可能性についてさまざまな知見が報告されてきており、科学的根拠が少しずつ見出されてきております。一方、2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、選手のケアやサポートを他の医療職種とともに行っていく機運が高まりつつある現在、多くのあはき師がスポーツとかかわる可能性に鑑み、より正確な知識や技術を広めていく必要性が生じてきております。

このような背景により本書の発刊の企画立案がなされてきたわけですが、東洋療法学校協会では、本書の発刊に向け、教材研究部のなかに特別委員会を設置するとともに公益社団法人全日本鍼灸学会スポーツ鍼灸委員会や旧版にかかわっていただいた監修者、執筆者、業界団体の先生方にも協力を得て、精力的に準備を進めてきました。携わっていただいた多くの先生方に敬意を表するとともに衷心より感謝を申し上げる次第です。

本書は、旧版の内容を現状に見合ったものに改訂するとともに、あはきとスポーツに関するエビデンスを紹介する章を設け、より正確かつ科学的視野に基づいた内容となっております。さらに、スポーツ分野に造詣の深い方々にご執筆をお願いしましたので、より実践的な書に仕上がっているものと思量します。したがって、スポーツ分野にかかわりを持つあはき師や他の医療職種の方々には、本書を是非ご活用いただき、日々の診療、選手のケアなどに役立てていただければ幸いであります。また、本書は初学者教育や各種講習会での活用も視野に入れており、多くの方にご利用いただきたく考えているところであります。

最後になりましたが、本書発刊に多大なる尽力をいただいた関係各位、特に編集から出版に至るすべての工程においてご努力いただいた医道の日本社編集部の皆様に感謝を申し上げ、発刊の挨拶に代えさせていただきます。

2018年8月

公益社団法人東洋療法学校協会
会　長　　坂本　歩